そろそろBlackFlydayですね。虎視眈々と欲しいソフトを狙っている方もいるのでは。
VJソフト、と一言に行ってもいろんなソフトが存在します。
特に有名どころなVDMX、Resolume、GrandVJのほかにも比較的マイナーながら支持を集めているソフトがいくつか存在します。
今回はそんなVJソフトの特徴を改めてまとめてみましたので、これからVJソフトを入手する方は参考にしてみてください。
また、記載しているのは2019年時点で入手可能なソフトに限っております。
不足があれば教えてください。
この記事を書くにあたり、各ソフトの使用者の方にいろいろお話をお聞きしました。
SabaLeoNメンバー、あっちん氏、ScreenSaver氏はじめご協力いただいた方々、誠にありがとうございました。
◆まず前座:VJソフトの要素について
VJソフトを紹介する前に「そもそもVJソフトってなに?」という方向けの項目です。
不要な人は飛ばしちゃってください。
古くのVJはかつてVHS(ビデオテープ)を大量に持ち込み、目当ての素材が入ったテープを挿入。
「早送り」「巻き戻し」でシーンを合わせて複数台のビデオデッキをビデオミキサーで切り替えて利用していました。
そこに対し技術が進展し、PCなら1台で全部できるよね、と出現したのがVJソフト。
つまり、「動画を選択して」「複数の動画を同時に再生する機能」を持つソフトウェアがVJソフトと言えます。
上記2つの要素はそれぞれ以下のような用語に置き換えられます。
要素1:動画を選択する/デッキ(Deck)
映像ファイルをスタックしておく領域です。
要素2:動画を同時に再生する/レイヤー(layer)
映像ファイルを並列に複数再生するための機能です。
AとBの2チャンネルで操作を行うソフトでは「チャンネル」と呼ぶ場合もあります。
VJソフトはこれらの機能が「どういう風に実装されているか」の違いで特徴づけられていると言えます。
本題:VJソフト紹介
ということで本題です。szkの独断と偏見で記載しているので誤りがあったらコメントにてご指摘ください!
VDMX
対応OS[Mac]
ユーザーが多く、ナレッジも多いVJソフトウェア。
最も特徴的な要素として「モジュール型」があげられる。
モジュール型は各機能が個別のウィンドウ化されており、使用する機能のみ表示させて、画面を自由に作り替えることが出来るタイプのソフトのこと。
VMDXはここらへんの奥が非常に深い。おなじVDMXでも人によって全く見栄えや操作感が変わってくるのが特徴。
そのためプロジェクトファイルの配布や裏技的にVMDXの使い方を日々配信している人もいる。
動画フォーマットはMP4で使用する人が多いがhapコーデックを使うとより高パフォーマンスになる。
レイヤーやデッキ数の制限もなく、PCスペックと使用者の頭のリソースが許す限り無限に増やすことが出来る。
ライセンス制約は「プロジェクトファイルの展開、保存ができない」こと。
2019/11/06 11:15追記:オープンは可能とのことです。hatotoさんありがとうございます。
プロジェクションマッピング機能は単体では無いがMadmapperを使用することで可能。
価格は$349、学生版は$199で購入できる。
Arkaos GrandVJ
対応OS[Mac/Windows]
一番の特徴は動画の対応フォーマットが多いこと。
MP4は当たり前でHapCodecやQuicktime形式、wmvやAviも再生できてしまう。
レイヤーは最大16、デッキは数十個の動画ファイルを登録できる。
しかしエクスプローラーやFinderから直接レイヤーに動画を登録できるためデッキをあえて使わないという方法もとれる。
これらの特徴からvirtualDJの次手としてアニクラの現場で使われることが多い。
プロジェクションマッピングはMadmapperを使用する。 →2019/11/06追記:Madmapper同梱版(GrandVJ XT)では、GrandVJに組み込まれたMadmapperを利用してプロジェクションマッピングができるそうです。
→2020/11/06追記:GrandVJ XTは「Madmapperだが、Madmapperとは似て非なるもの」(エンジンが一緒でUIは通常のMadmapperとは異なる、いわばGrandVJ版ResolumeArenaのようなもの)との情報を頂きました。
UIの統一等を目的なのであれば通常版GrandVJ+Madmapperという選択肢もありそうですね。
そのほかでは画面のレイアウト構成が大きく変更できないため誰が使用してもわかりやすい。
価格は2ライセンスで299€。
Resolume
対応OS[Mac/Windows]
当ブログ御用達のVJソフト。
エディションが2つあり「Arena」と「Avenue」がある。公式的には「Avenue=VJソフト」だがArenaはメディアサーバであると謳っている。
操作感や画面構成は上記2つで大きな違いは無い。
上記で紹介した2つのVJソフトと比べると、レイヤーやデッキの概念が全く異なる。
他のソフトが「レイヤーは1つのプレイヤーである」というスタンスを持っているのに対し、Resolumeは「レイヤーは1つのプレイリストである」というスタンスを持っている。
レイヤーに「横列」(カラム)の概念が存在し、1つのレイヤーに数珠繋ぎのように動画が無限に登録できる。
事実上これがほかのソフトでいうところの「デッキ」と同じ効果を持つことになる。
VJは各レイヤーの「カラム」から再生したい動画を選択して再生していくという恰好になる。
一見かなりややこしい仕組みに感じるが、アドリブでプレイするVJという概念とは別に、イベントの進行に合わせて動画を出力するメディアオペレーター(送出)で使用する際に真価を発揮するスタイルであるのでライブでVJを行う可能性のある人にはおすすめしたいソフト。
プロジェクションマッピング機能はArenaのみ搭載されている。
価格はArenaが799.00€。Avenueが299.00€と少し割高。
学生版は半額で購入可能。BlackFridayでは最大75%OFFになる。
Coge
対応OS[Mac]
VDMXと同様のモジュール型を採用するVJソフトウェア。
モジュール型だがVDMXに比べると機能が少なく、再生対応フォーマットも多いがArkaosほどではない。
といった一見器用貧乏な印象を受けるソフト。
ただ、言い換えると必要な機能のみしっかり実装されたシンプルな堅実派。
そして何より1万円と少しで購入できる価格帯の安さが強み。
再生するファイルの要件にもよるが、必要スペックも高く無くサブマシンに導入するするにはうってつけのソフトと言える。
32bit版のみリリースされているため、2019年11月現在最新のMacOSで動作しない。
更新でもアナウンスされており2020年の初頭に64bit移行の大型アップデートがあるようだ。
2020年10月時点でも上記のアップデートは未実施、どうやら様々な影響で遅延しているようだ。
価格は2019年11月6日時点で14,000円。
3ライセンス版は21,000円とかなり割安。
Module8
[対応OS:Mac]
名前の通りモジュール型のVJソフト。一番の特徴はPythonによるパネル開発がサポートされていること。
つまりプログラムを触れる人はModule8の新機能を自身で開発することが出来る。
(ほかのソフトもPluginやModuleの自己開発が可能だがModule8はそれを推している)
価格は299€(3万5千円)だが、1ライセンスで2台まで登録が可能。
プロジェクションマッピングはMadmapperを利用する。
virtualDJ
[対応OS:Win・Mac]
名前の通りVJソフトウェアではなく、DJソフトウェア。
ただしMP4の再生に対応しており、ABチャンネルで2デッキ分再生が可能。
レイヤーの概念は無く、デッキの概念もない(エクスプローラーから直接動画を投入する)
2019/11/06追記:楽曲データのライブラリに動画ファイルを読み込めるそうです。また名称もDeckとのこと。VJゆっき~さんありがとうございます!
DJソフトウェアであるためスクラッチの概念が存在する。(ジョグホイールがついたMIDIコントローラーで早送り/巻き戻しと相性が良い)
そのため、リップシンクを行う際に相性が良く、アニクラの現場で主に愛用される。
無償版でもそれなりの機能があるため、アニクラでデビューするVJはこのソフトが最初の相棒となることが多いのではないだろうか。
プロジェクションマッピングはサポート外。ほかのソフトに入力して(NDI+Madmapper or Resolume)行うことは可能。
その他のVJソフト
「レイヤー」「デッキ」「チャンネル」の要素をすべて、あるいは一部を持たないソフトたち。
だがサブソフトとしての強みや、ほかのソフトには無い魅力がある。
VJ初心者の方は「こんなソフトもあるんだ」という知識として身に着けておくと、先輩VJの会話に入りやすかったりするかもしれない。
metakinetica
neknee氏が開発するUnityベースのジェネレートソフトウェア。
VJソフトでありながらDeckやレイヤーの概念が存在しない変わり種。
画面は1枚で、表示されているオブジェクトの「形」「色」「動作」「テクスチャ」「カメラ方向」を切り替えてVJを行うソフトになっている。
そのため利用する現場はかなり選ぶ。
クイックMixやアニクラとは相性が悪く、逆にミニマルテクノやトランスなどのロングMix現場には相性が良い。
他のVJソフトの逃げ画などに連携して使うこともできるソフト。
価格は頒布時によるので時価。(500~1000円?)
詳しくはこちらの記事で紹介しております。
COLORCODE VJ
[対応OS:iOS]
iPadやIphoneで使用できるiOSで動作する軽量VJソフト。
A/Bチャンネル&デッキのみのシンプルな構造で、レイヤーの概念は存在しない。
DJ機能を省かれたVirtualDJという感じ。
初心者向けとされるが、素材登録がかなり面倒なのでこのソフトで入門するくらいならPCユーザーはVirtualDJを使ったほうが挫折が少ないだろう。
サブマシンとして優秀なタブレットを逃げのマシンとして使えるためビデオプレイヤーの代理などにも使用できる。
パーティロゴ出しなどにも使えるためサブアプリケーションとしての特性が強い。
価格は2,940円
あのタグで待ってる
Macでのみ使用できる「コンテキストVJ特化型ソフトウェア」。
レイヤの概念は無いが、代わりに「A/B/C/D」チャンネル方式を採用している。なので実質4レイヤーのソフトとして扱える。
特徴は「ファイル名を元に関連する素材をDeckに自動表示してくれる」こと。
例えば「飛ぶ_踊る_はしゃぐ_かわいい.mov」のようなファイル名があったときに類似するファイル名の素材を自動羅列してくれる。
アニクラの関連アニメ作品はもちろん、声優や作詞作曲者名を登録しておけば、それも関連として表示できる。
ナレッジが少ないため推測だがCoge同様。32bitソフトウェアの互換切りで最新のMacOSでは使用できなくなっているはず。
価格は無料。
TOUCHDESIGNER
Pythonで動作するプログラミングフレームワーク。
競合にはprocessingがあるが、こちらのほうがVJとしてのナレッジが多い。
尚、これはVJソフトではない。
※2020年11月現在、公式サイトでは「プロジェクションマッピング環境開発&相互運用開発ツール」となっている。
processingと比較するとより「VJ用途に近いソフト」であることを推してきているようだ。(2020年11月追記)
プログラミングを自分で行い、組み換えていくことで「VJソフトとしても使える」描画特化プログラミングフレームワークである。
つまり「自分でVJソフトを作りたい人」へのおすすめとなる。
ファイルの読み込みやジェネレートエフェクトの作成、動画、音声、デバイスの外部読み込みなど必要なモジュールは一通り揃っている。
メディアアート系に使用者が多いためナレッジも比較的多め。
価格は無料だが、商用用途になるとライセンス費用が発生するので規約違反には注意しよう。
以上、主要どころのVJソフト紹介でした。
その他タブレットで動作するソフトウェア等もありますので、自身のニーズに見合ったソフトを選んでみると良いと思います。
ちなみにどのベンダーも11月末にはBlackFridayセールを実施するものと思われます。
価格が50%OFFになるソフトもあるのでそれまでに体験版で操作感を確かめておくと良いと思います。
また、VJソフト以外で必要なものは以下の記事で紹介してますので良ければ見てみてください。
[blogcard url=”https://szkhaven.com/2019/07/31/vj_items_must/”]